ステンレスの深絞りを検討する際に成形限界を超える深さのものがありますが、通常の冷間成形では難しい場合は金型にヒーターを組み込み材料自体を加熱する事で冷間成形の成形限界を超える事が可能になります。
この工法は時折アルミ材にも使用するものですが、全ての材質で成形限界を伸ばせるものではなく、オーステナイト系ステンレスで特に大きな効果を発揮します。
単に金型を100℃以上に加熱するのではなく、金型の一部を冷却し、一定の箇所のみを加熱する事で冷間成形と比較し10%以上の絞り率を向上させる事が出来ます。
もう一つ、加熱する事で成形限界を伸ばす工法として焼鈍工法がありますが、こちらはプレス工程の中に真空炉に入れる工程を追加する必要があるので非常にコストがかかります。勿論焼鈍でなければ成形が困難な場合に限り、焼鈍工程の提案をさせて頂く場合がありますが、温間成形での検討が可能な場合は焼鈍と比較し圧倒的なコストメリットがある為温間成形のご提案をさせて頂いております。
この温間成形は多くの深絞り金型に用いられていますが、実際に温間成形の金型を設計、製造出来るメーカーは限られています。
そもそも何故燕三条地域に深絞りが集中するのかについては様々な要因があると考えていますが、要因の一つとして【深絞りに対応している油圧プレス機械】の設備ラインナップがあります。
通常のプレス機械は上から下へ加圧する仕様になっていますが深絞りの場合、上から下へ加圧するのと同時に、下から上へ加圧を行います。この仕様のプレスは全国どこにでもある訳ではなく、鍋や器物を作ることを得意としている燕三条地域に集中しています。
そしてその深絞り加工を行うメーカーが集中している燕三条地域においても、大型の油圧プレス(400t〜800t)で深絞り加工を製造ラインを組むことが出来る加工メーカーは非常に少なく絞り案件が全国から集中します。
温間成形はそれらの機械を必要とする深絞り加工においても、通常の冷間成形では加工困難な場合にのみ用いられる工法である為、完成品メーカー様も温間成形について知らない場合が多いのです。
通常の冷間成形では絞る事が困難な部品、現在板金熔接工法にて作っていてその工数を削減する為に深絞りによる一体成形を検討されている部品は温間成形により成形限界を伸ばし深絞りによる一体成形を実現することが可能になる場合があります。
油圧プレスを使った深絞りをご検討の際は、是非とも当社までご連絡ください。